ところで事業主貸・借勘定って何?

個人事業主にとってかなり時間を取られてめんどくさい確定申告。

青色申告を行うためには複式簿記による申告が必要ですが、

普段から経理に慣れていないとなかなか難しいもの。
その中でも特にとっつきにくい(意味不明な)『事業主貸』と『事業主借』について解説していきます。

事業主貸・借勘定ってそもそも何?

まず最初に聞かれます(笑)

 

事業主貸ってやつが多すぎない?この内訳知りたいんだけど~(疑)

 

とか言われますね。仕方ないので内訳出すと苦笑いされます。

1月15日:一人でキャバクラに行って遊んだ費用 3万円

1月23日:友達とゴルフに行って温泉入って宴会して一日遊んだ費用 6万円

1月28日:妻から支給されるお小遣いでは月末しのげず、こっそりATMでおろしたお金 5万円




(以下略)

 

 

もう何となくお気づきかもしれません。

 

 

事業主貸・借勘定とは、事業とは関係のないお金を出し入れした時に使う勘定科目です。

 

 

個人事業では仕事のお金とプライベートのお金を分けていない場合が多いので、

『事業で使った(もらった)お金』と
『プライベートで使った(もらった)お金』を
しっかり分ける必要があります。

特に経費関係は仕事で使ったかプライベートで使ったかを仕訳の段階で分けておくことで、集計がとても楽になります。

その集計を手助けするのが、事業主貸・事業主借勘定なのです。

事業主貸

事業主貸は、事業用のお金を個人に渡した時に使う勘定科目です。

例えば事業用の口座から生活費として200,000円を引き出した時、経費では処理できませんよね。
このような時、経費ではないものとして下記の仕訳をします。

事業主貸(借方) 200,000  /  普通預金(貸方) 200,000

 

プライベートな支出が発生したときは、このように事業主貸を使って処理します。

 

事業主借

事業主借は、個人のお金を事業用で使ったときに出てくる勘定科目です。

例えば、商品の仕入れ10,000円を個人が立て替えた時は

仕入(借方) 10,000  /  事業主借(貸方)  10,000

となります。

また、事業用の口座に資金が足りなくなり、一時的に個人のお金を入れることもあります。
こんなケースで200,000円を口座に入れた場合は、下記の仕訳をします。

普通預金(借方) 200,000  /  事業主借(貸方) 200,000

 

個人のお金を事業用に預入した時は、このように事業主借を使って処理します。

 

ちなみに・・・。

事業主貸と事業主借は似ている勘定科目で、ちょっとややこしいですよね。

でも、事業主貸と事業主借は期首(1月1日)に清算をすることになりますので、
間違っていても最終的には同じ科目の数字になります。

ですので、

今まで事業主貸でやっていたのですが、一部本当は、事業主借でした。

さかのぼって直す必要がありますか?

 

と気にする必要はありません(時が解決します)。

 

いつ精算するの?

さて、精算の話をしましたが、具体的には、

事業主貸・事業主借の勘定は期首(1月1日)清算を行い、
事業主貸と事業主借勘定の差額を元入金に振り替えます。

元入金については後ほど説明しますので、
まずは清算方法について説明しましょう。

清算は、次の式を使って行います。

事業主借 + 青色申告控除前の所得 - 事業主貸 = 元入金

期首にこの式で元入金を計算し、それぞれの勘定科目を相殺することになります。

 

具体的な事例を見てみましょう。

★前期末(12月31日)

事業主貸:500万円

事業主借:400万円

青色申告特別控除前の所得:300万円

の場合の元入金は

400万円 + 300万円 - 500万円 = 200万円

となります。

会計ソフトを使っていれば次年度への繰越処理で自動計算してくれるので、
意識する機会は少ないです(楽チン)。

ただ、元入金とは会社にとっての資本金のようなもので、
事業主がどれだけ事業にお金を残しているかという指標にもなります。

この元入金がプラスだと黒字事業にもお金が残っている状態です。

逆にマイナスであれば、
赤字か生活費などで利益以上にお金が出ていっているということになります。
ですので、この仕組みを知っておいて損はないです。

元入金のプラスが大きいと、出金先の口座やその先の資金の流れで何が行われているかは、税務調査をする上では確認したいところでしょう。

例えば、事業で得た収益を事業主貸勘定を通じて投資用の口座に出金していると、

投資先の口座で得た投資の収益をきちんと確定申告していないと、税務調査で指摘を受けることになるでしょう。

(代表例)

・海外FX

・仮想通貨

・海外不動産

大抵ばれないと思って申告していないと痛い目を見ます(笑)

 

また、元入金がマイナスになると、ちょっとだけ困ることがあります。

それは、

・融資を受けたいと思っているとき
・取引先に確定申告書を見せる機会があるとき

です。

これらのケースで確定申告書を見る理由は、

『事業主がしっかり利益を上げ、資金繰りもできる人か』を見るためです。

例えば、利益が大きいのに元入金がマイナスだと
『利益は出せるが出しただけ使う人』と見られる可能性があるので、
融資や新規開拓を考えている方は、元入金がプラスになるよう気を付けましょう。

確定申告時に注意すべきポイントは?

事業主貸・事業主借勘定は個人のお金を出し入れしたときに使うことは、第1章でもお話ししましたが、
確定申告をするときに注意して欲しいポイントがあります。

 

それは、経費で計上するものを事業主貸・事業主借勘定で入れていないかです。

 

特に個人のものと事業のものをまとめて支払っている時などに、全部事業主貸で処理してしまっているケースをよく見かけます。

例えば、ETCの支払10,000円の内3,000円は事業分なのに、引き落としの時に

事業主貸(借方) 10,000  /  普通預金(貸方) 10,000

と処理してしまっているのです。

これは

旅費交通費(借方)  3,000 / 普通預金(貸方) 10,000
事業主貸(借方)   7,000

と処理することで経費の計上漏れを防げます。
カード払いのものは、請求書を見て経費になるものがないかしっかりチェックしましょう。

逆に経費で計上してはいけないものを経費の勘定科目で入れていないかも意外にあります。
先ほどのETCを例にみると、プライベートで使った分7,000円があるのに、

旅費交通費(借方) 10,000  / 普通預金(貸方) 10,000

と処理してしまっているのです。

うっかりでも後々余計な税金(延滞税)がかかる可能性もあります。
確定申告をする前に、必ず事業主貸・事業主借勘定を一通り確認しておきましょう。

Q&A

最後に、事業主貸・事業主借勘定に関してよくある質問や相談をまとめてみました。

Q.家で仕事をしているけど、家賃は経費にならないの?

A.一部なります。
例えば、1部屋は仕事専用で、その他は生活用で使っているとしたら、
その1部屋分の家賃が経費となります。

ざっくりとした計算ですが、
家の広さ100㎡・仕事部屋の広さ20㎡・家賃200,000円とすると、
仕事部屋の割合20%分の40,000円が経費となります。

事業主貸(個人分) 160,000  /  普通預金(現金)  160,000
地代家賃(事業分)  40,000

この場合、電気代も一部経費になりますので、忘れずに処理してくださいね。

 

Q.スマホを仕事とプライベート両方で使っているけど、経費になるの?

A.一部なります。
考え方は先ほどの家賃と全く同じです。
この場合は電話帳に登録している人数や通話時間、発着信回数など
自分の使い方に一番合った方法で按分しましょう。

例えば電話帳に登録している人数が仕事100人、プライベート100人、
電話料金が10,000円としたら、経費は半分の5,000円になりますね。

事業主貸(個人分)  5,000  /  普通預金(現金)  10,000
通信費 (事業分)  5,000

 

Q.税金の支払いはどう処理したらいいの?

A.『事業主貸』勘定を使うパターンと、『租税公課』を使うパターンがあります。
これは税金によって経費にならないものとなるものがあるためです。

ならないもの:所得税・住民税・消費税
なるもの  :固定資産税・自動車税・事業税など

<経費にならないものの仕訳>
事業主貸  50,000  /  普通預金 50,000

<経費になるものの仕訳>
租税公課  50,000  /  普通預金 50,000

 

Q.普通預金の利息って売上や収入になるの?どう仕訳すればいい?

A.なりません。『事業主借』を使って仕訳します。
利息はすでに所得税を引かれた状態で入金されていますので、
確定申告にかかわる利益の計算とは関係ありません。
ですので、事業主借の勘定で処理することになります。

普通預金     10  /  事業主借    10

少額ですが口座の残高を帳簿と実額で合わせるために、しっかり処理してくださいね。

 

Q.水道代で13,525円ピッタリおろして払うつもりが、
間違って13,528円おろしてしまった。3円だけ入金できないし、どうしたらいい?

A.3円分は事業主貸(借)で処理しましょう。

水道光熱費  13,525  /  普通預金  13,528
事業主貸       3

または

事業主貸    13,528  /  普通預金  13,528
水道光熱費     13,525  /  事業主借  13,525

おろした金額は通帳に記帳されているので、
その金額は絶対に動かさないのがポイントです。

個人事業主の経理では、事業主貸と事業主借の勘定を使う機会はかなり多いです。
しっかりとマスターして、経費をしっかり計上できるようになりましょう。

 

ABOUTこの記事をかいた人

東京都で働く公認会計士・税理士です。祖父・父親・叔父・弟も公認会計士や税理士の不思議な家系です。移転価格・組織再編・タックスヘイブンに強みがあります。ついついブログの投稿とダイエットは3日坊主です(笑)