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2018.05.23
  • 会計税務顧問

はじめて組織を作る社長が知っておくべき組織のルール

はじめて組織を作る社長が知っておくべき組織のルール

事業規模が大きくなってくると付きまとうのが、組織の問題。

創業当社は、顧客の獲得や安定供給できる仕入先の確保といった対外的な業務が社長の全てだったでしょう。

しかし規模が拡大してくると、社長一人でビジネスを回すことは困難になり、組織を運営していかなければなりません。

そうすると、徐々に対外的な仕事から対内的な仕事へ社長の仕事はシフトしていくことになります。

 

対外的には力を発揮する剛腕社長も、組織のこととなると途端にうまくできなくなることもよくあります。

 

今回はケーススタディを通じて、組織を作るうえで社長が知っておくべき組織のルールを考えていきます。

Contents

事業拡大とともに直面した諸問題

Imono社は、先代の頃より独自の鋳物技術を駆使して、顧客のさまざまなニーズに答えてきました。そのことが認められ、受注数は毎年順調に増加し、業務拡大により社員数も近年右肩上がりに増加しています。

こうした中、社長も先代から息子に世代交代しました。

若き社長は「町工場」から「世界のメーカー」を目指し日々奮闘しています。

 

少数精鋭の頃は、社長も社員全員のフルネームと顔を覚えていました。

が、人数が増えてくると覚えきれなくなり、意思の疎通が難しくなってきたことを感じていました。

 

 

だましだまし事業を拡大し続けていたところ、半年ほど前から事態は急変します。

社内全体のまとまりがなくなってきたばかりか、受注数の増加で、納期遅延や製品の品質低下が頻発するようになったのです。

当然、顧客からのクレームが殺到し、クレーム対応にばかり追われたコアメンバーは疲れ果て、退職する事態にまで発展してしまいました。

 

 

先代である会長は、たまに会社に顔を出す程度と考えていました。

しかし、あまりの非常事態です。

どうすべきか悩んでいたところ、大学時代の同級生で組織論で有名な大学教授と食事をする機会を持つことになりました。

まずはじめたこと

会長は、食事会で自分の会社は息子に任せているがとても心配であることや、会社で起きている諸問題について教授に話をしました。

教授は、最初はなんとなく話を聞いているようでしたが、一通り話を聞き終わると先代に逆に質問をしてきました。

 

今の状況に一番必要なものは何でしょうね?

 

会長は、

自分たちは一生懸命やっている、他に足りないものは思いつかない、どうしたらいいいのでしょう?

と答えました。

教授は、軽くうなづきました。

物事にはルールがあると思いますが、社内のルールを作り、マネジメントをする必要があります。

会社に必要なルールをまずはきちんと作ってはどうですか。

世界を目指す息子さんなら、すでに学ばれていると思いますし、そうでなければそういった類の専門書をまず読んでみてください。

会社に必要なルールって何?

若い頃から叩き上げで仕事をやってきた会長には、なんとなく言いたいことは分かります。

それでもいまいちピンとこない話でした。

 

ヒントをくれた教授には話を聞いてくれて感謝していると礼を述べ、そそくさと本屋へ行き、

とりあえず「組織論」について書いてある専門書を数冊買ってみました。

 

本にはマネジメントシステム活用の意義がかかれており、息子に教授から聞いた話をしました。

ところが息子は、

MSのことなら知ってるよ。そのことについて、わたしもどういう風に構築していこうか思案中だよ。

との答えだったので、会長は同じようなことを考えている息子に少しの安堵感を覚えたのでした。

それでも、早急な対応が必要であることには変わりが無く、

会長自身も今まで通りやっていては駄目なのだなという意識に変わってきたのでした。

 

自宅に戻った先代は、数冊買った専門書を老眼で読みにくいのを我慢して、引き続き読み続けました。

 

企業の組織形態には事業部制組織と職能別組織とがあり、中小企業は基本的に職能別組織が適している。

 

それぞれのメリットとデメリットも書かれており、

 

職能別組織は業務や組織の重複が生じにくく(専門領域が明確化)効率的であることや、部署間や社員の目的共有が難しく責任の所在が希薄化する。

また、職能別組織には職務分掌が不可欠で、役割を明確にし、責任と権限を明確に持たせることが重要だ。

 

売上と利益目標くらいしか掲げたことのなかった会長にとっては、目から鱗の内容のものばかりでした。

今の会社の組織化がスムーズに行うことができるか不安もありますが、それでも何もしないよりはマシだと思いました。

導入してもうまくいかない

それから一時して、久しぶりに会社に顔を出すと、なにやら見慣れない文字が目に入ってきました。

 

製造部・・・?

おっと、ここは、技術部か

息子がどうやら、部門の設置をしたようでした。

 

することが早いのだけは私に似たのかと思いながら、社内を一巡すると、製造部、技術部、業務部、経理部の四つの部門が設置されていました。

デスクはパーテーションで区切られ、その一番奥へと進むと社長室があり、息子が電話で話しているのが見えました。

製造部には誰もおらず、技術部はパソコンが数台あるのみで、やはり誰もいませんでした。

業務部は一体何をするのだろうか?などと少し疑問を持ちはじめました。

 

経理部には、長年勤めてくれている女性がいましたので、社内が随分変わったねと声をかけました。

女性は、

そうですね、なんだかテレビに出てくるような会社らしくなった気がします。

と答えました。

 

息子の電話が終わったので、なんか最近会社らしくなったなと話しかけると、怪訝な声で、

それが、苦労して部門を設けたのに新たな問題が発生したんだ。

と言ってきました。

 

どんな問題なんだ?と聞くと、社長は頭を抱えながら答えました。

安達さんを製造部にした途端、今まで製造から検査までしていたのに、品質検査をしないと言いだしたんですよね。

安達さんの主張は、自分は製造部なのだから、検査は技術部の仕事であるというんだ。

だったら、兼務にしたらどうだと言うと、部門に分けて間もないのに、すぐに兼務にすると部門設置の意味がないような気がする。

と言われてしまってね。

 

そうか、今度はそのような問題か。

 

しかもそれだけではなく、部門を分けたことで決裁に時間がかかるようになって、お客さんにも迷惑がかかってしまっている。

先が思いやられるな。

とぼやいていました。

人事評価の改革

それからかなり経過して、会長が久しぶりに会社に顔を出すと、会議が行われていました。

会議するより、まずは現場だろと思いましたが、いやいや色々な諸問題を解決してきたであろう息子のすることにいちいち口をはさむまい。

とりあえず会議が終わるのを経理の女性が出してくれたお茶と共に待ちました。

かなり長い間待ちくたびれた会長は、後どの位かかるか分からない会議に見切りをつけ帰ろうとしていた矢先に、社長が出てきました。

「えらく長い会議だな」と言うと、

 

「人事評価の導入についての色々な意見交換をしていました。人事評価は通常上司が部下を評価することが一般的だけど、自分はそうはしたくない。部下が上司を評価してもいいのではと考えています。」

 

といった内容の話をしてきました。

会長の時には、基本給に就業年数に応じた一定の係数をかけた昇給率で給与を出していたので、その話に驚いたのでした。

 

部下が上司を評価することで、一体何のメリットがあるのかと社長に聞くと、

職場や仕事では一定の緊張感が必要不可欠です。

それは部下だけではなく上司でも同じであり、お互いにフェアに評価し高め合う風土ができれば、

製品や技術の改良につながる。

いい意味で風通しの良い会社にしたい。

とのことでした。

会長は、自分には全くない発想の息子に毎回驚かされてばかりです。

その半面、これからの時代に合った経営者なのだろうなという思いがしてきました。

すると、なにやら胸が熱くなってきて、

 

「今日はもう帰るからね」

 

とだけいい残し会社を後にしたのでした。

 

会長は家路に向かう途中、もう自分のでる幕はなくなったが、息子が大きく成長していることを感じました。

寂しさと嬉しさが入り混じった妙な気持ちになったのでした。

まとめ

今回は、組織論で最も一般的で中小企業で多く取り入れられている職能別組織について紹介しました。

職能別組織の長所としては、

・業務内容に応じて分化しているので、効率的な仕事ができる。

→ 一人で何でもやらないといけないような非効率な経営からの脱却。

職能別組織の欠点としては、

・部署間での壁が出来やすい。

→部門が権威化し、特に所属長に権限が集中する結果、全社的な観点からではなく、自部門の利益を優先する。

社長は、混乱した社内を整理するため、各人の業務内容に応じた職能別組織を採用することで、経営の効率化を図りました。

この点は成功したといえます。

 

しかし新たな問題として、製造部が技術部の仕事をしないといった部門ごとのセクショナリズムが発生しています。

この場合どのように解決したらいいのでしょうか?

例えば、将来的に技術部を製造部から独立するとしても、当面は技術部をなくして製造部の中の一部署として位置づけることも解決の一つでしょう。

製造部の管理下に置くことで、検査の業務をしないという逃げ道を取り除くことができます。

この場合も技術部から技術課に格下げされる所属長の心情・待遇には配慮しなければなりません。

 

一方で社長はこの問題に対して人事評価の観点から解決策を見出そうとしています。

全社的な観点からの組織への貢献を人事評価項目として重視することで、職能別組織の欠点を超えようとしたのです。

技術部の非常事態に、製造部が部署の垣根を越えてサポートすることは、結果として顧客満足につながり、全社利益に貢献する。

現状の人事評価だと製造部にサポートするインセンティブはない。

人事評価に全社利益への貢献をしっかり評価することを謳うことで、今より風通しのいい組織になっていくんじゃないか。

社長は、そのように考えたのではないでしょうか。

 

教科書をいくら読んだところで、自社に最適な組織構造は見えてきません。

人事評価を変えるといっても一筋縄でいかないことは誰しも分かるところでしょう。

 

大事なことは、組織論を道具として、自分の頭で考え、実践し、修正していくプロセスを繰り返すことにあります。

 

ケーススタディで登場した社長は、

典型的な二代目ダメ社長だな~。組織がめちゃくちゃになっていっているじゃないか。

そう思われませんでしたか。

 

実際は逆だと思います。

 

 

失敗を繰り返す社長の姿に、会長が成長を認めるのは、

 

「問題にきちんと向き合い、正面から取り組む姿勢」

 

を肌で感じ取ったからではないでしょうか。

 

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