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2018.05.28
  • 会計税務顧問

結局社宅と家賃補助って税務上どっちがいいの?税理士が解説します。

結局社宅と家賃補助って税務上どっちがいいの?税理士が解説します。

従業員の福利厚生にもなる会社の社宅制度と家賃補助制度。どちらか一方を採用している会社もたくさんあります。では、これからどちらかの制度を導入しようと考えている場合は、何を基準に選択すればよいのでしょうか。今回は、社宅と家賃補助の違いについて見ていきましょう。

Contents

社宅と家賃補助の制度概要

まずは、社宅と家賃補助の制度について概要を確認しましょう。

社宅とは、会社で用意した従業員のための住まいのことです。会社が所有している物件を社宅にする場合と、第三者が所有している物件を会社が借り上げて社宅にする場合があります。後者の借り上げ社宅が一般的で、会社の規模や従業員数によってマンションやアパートだったり、戸建てだったりします。社宅の家賃はいったん会社が全額支払い、一部を給料から天引きの形で従業員が負担するケースが多いです。

家賃補助は、従業員が住居を第三者から借りている場合に、その一部を会社が負担する制度のことです。住居の賃貸契約はあくまで第三者と従業員の間で結びます。会社は手当という形で毎月の給料に家賃補助分を上乗せして支払います。

社宅も家賃補助も福利厚生の1つです。従業員のやる気を上げて、さらに業務に励んでもらったり、優秀な人材の確保に役立ったりする効果があります。

社宅のメリット・デメリット

では、社宅と家賃補助のメリットとデメリットを見ていきましょう。まずは社宅からです。

メリット

・福利厚生面でのアピール
社宅がある企業とない企業では、社宅のある企業のほうが福利厚生面をアピールできます。また、従業員が自分で家を探す手間が省けるため、従業員を確保しやすくなります。

・社宅の家賃を経費にできる
社宅は、従業員が業務を遂行するために必要な費用であるため、会社の経費に計上することができ、節税につながります。

・家賃補助に比べて、従業員・会社の税金が安くなる
従業員にとって、社宅があるメリットで一番大きいのが税金面での優遇です。本来、従業員が住むための家の賃料は、従業員が自分で支払うべきものです。そのため、会社がその家賃を肩代わりすると、従業員はその分の給料をもらったのと同じ(現物給与)と考え、所得税等の税金が課されます。しかし、社宅という制度は日本に根付いている制度のため、一概に税金をかけるのには抵抗があるので、会社が負担する金額が一定の条件を満たした場合は、そこにかかる税金を非課税にしています。非課税の条件は、従業員が月々負担する社宅の家賃が賃貸料相当額の50%相当額以上であることです。賃貸料相当額とは、実際の家賃ではなく、以下の計算式で計算した金額です。

家賃相当額=(その年度の家屋の固定資産税の課税標準額×0.2%)+(12円×その家屋の総床面積(㎡)/3.3(㎡))+(その年度の敷地の固定資産税の課税標準額×0.22%)

例えば、上記の計算式で計算した家賃相当額が10万円の場合は、5万円を従業員が負担、残りの5万円を会社が負担すれば、会社が負担した5万円は給料にはならず、税金がかかりません。年間では60万円もの金額が非課税となるので、従業員にとって大きなメリットです。
※役員が住んでいる社宅の場合は、この計算式では計算しません。社宅の種類などで計算方法が異なるので注意が必要です。

会社負担分が従業員の給料にならないということは、所得税などの税金だけでなく社会保険料もかからないということです。社会保険料は会社と従業員が折半で負担するもののため、従業員だけでなく、会社にもメリットになります。

デメリット

・敷金・礼金等の取扱いに注意
社宅の家賃は会社と従業員で負担しますが、敷金や礼金をどうするかは会社によって取り扱いが異なることもあります。従業員ともめないように規定などを作っておく必要があります。

・会社と貸主との契約に手間がかかることもある
社宅を探したり、借りたりする手続きはすべて会社が行います。せっかくいい物件が見つかっても、中には法人と契約を嫌がる貸主などもいます。そのため、契約などの手続きの手間がかかることもあります。

家賃補助のメリット・デメリット

次に家賃補助のメリットとデメリットを見ていきましょう。

メリット

・社宅に比べて手間がかからない
社宅の場合は、貸主と契約したり従業員の入居や退居の手続きを行ったりと手間がかかります。家賃補助の場合は、給料に手当として上乗せして支払うだけなので、手間が少なくて済みます。

・従業員が住みたい家に住める
従業員の中には、プライベートを大事にしたいと考えている人や、自分で住む場所を決めたいという人もいます。その場合は、社宅よりも家賃補助が好まれます。

・家賃補助は経費にできる
家賃補助は、従業員の福利厚生のために必要な費用です。そのため、会社の経費(給与)に計上することができ、節税につながります。

デメリット

・家賃補助に税金や社会保険料が課される
家賃補助は、社宅のように一定額が非課税になるという制度はありません。家賃補助として支給した全額が給料とみなされ、所得税や住民税、社会保険料が課されます。そのため、家賃補助から税金と社会保険料を差し引いた金額が、実質の家賃補助になります。従業員としては負担が増えますし、会社としてもせっかく福利厚生のために支給した金額の一部しか有効活用されないことになります。

・会社の負担が増える
家賃補助は給料とみなされるため、社会保険料がかかります。社会保険料は会社と従業員が折半して負担する必要があるため、会社の負担が増えます。例えば、同じ5万円を社宅として負担する場合と家賃補助として負担する場合では、社宅の場合は5万円だけの負担になりますが、家賃補助の場合は5万円+社会保険料の負担となります。

まとめ

社宅と家賃補助では、税金や社会保険料のことを考えると社宅の方が有利です。

しかし、実際は、税金や社会保険料のことだけでなく、事務手続きの手間や家賃補助を好む若い従業員が多いことなども加味して考える必要があります。

社宅と家賃補助の一長一短をよく理解した上で、自社にとって最もふさわしい福利厚生のあり方を探ってみましょう。

投稿者プロフィール

佐藤淳一公認会計士・税理士
1987年1月6日 / 千葉県
東京都中央区で会計事務所を現在経営しています。
スタートアップ企業の会計税務顧問のほか、財務デューデリジェンス、株価算定、組織再編、移転価格といったビジネスコンサルティングに従事しています。クロスボーダー三角合併や事業の多角化に伴う純粋持ち株会社化など組織再編を絡めたOnly Oneな提案を得意とします。

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