国際税務を語る上で欠かせない用語を税理士が5つ厳選!!

国際税務は、具体的な各論に入る前の前提事項として一定のインプットが必要です。

正しい前提条件のもと議論しないとよくある質問や疑問点にお答えしても、

「は?言ってる意味が分からん・・・」

となりがちです。

また前提事項を誤って理解していると、自分ではセーフだと思っていたのに、思わぬところで課税された!というのが往々にしてあります。

「海外での活動をPEとして現地当局から認定を受けて課税を受けた」といったケースは、よく耳にすると思います。

そこで、悩み深い国際税務を紐解く上で、重要となる前提事項を5つピックアップしました。

ひとつひとつ確認していきましょう。

恒久的施設(Permanent Establishment:PE)

まず最も大事な用語から確認していきます。

恒久的施設(Permanent Establishment:PE)とは、国際的な課税権の範囲を主張・解決するために、非居住者および外国法人の課税関係を決める重要な指標のことをいいます。

PEの範囲は、国内法、租税条約およびOECDモデル条約にそれぞれ規定され、国内法においては以下の3つに区分されます。

(1) 支店、出張所、事業所、事務所、工場、倉庫業者の場所など(支店PE)。

(2) 建設、据付け、組立て等の作業、またはその指揮監督の役務の提供を1年を超えて行う場合のその場所(建設PE)

(3) 国内に自己のためにその事業に関し契約を結ぶ権限のある者で、これを常習的に行使する者など(代理人PE)

ポイント

PEなくして課税なし

上述の「PEを有しない外国法人」等の「事業の所得」については、源泉所得税も法人税もまったく課税されません。

いわゆる「(自国内に)PEなければ(外国法人の事業所得への源泉地)課税なし」という、“国際的に共通の課税ルール”です。

課税対象範囲の見極め

例えば支店PEが認定された場合、国内法では、日本を源泉とする所得のすべてが課税対象となる「総合主義」に基づく課税が行なわれます。

一方で、日本が締結している租税条約のほとんどは、その恒久的施設に帰属する国内源泉所得のみが課税対象となる「帰属主義」が採用されています。

租税条約は内国法に優先されるため、外国法人の所在地国と日本との間の租税条約の有無およびその内容により、課税対象となる所得の範囲は内国法と異なります。

したがって内容を十分に確認しなければ意図せずして二重課税が発生したりまたは納税すべき金額を負担していなかったりといった問題が生じる場合があります。

なお「総合主義」、「帰属主義」、「租税条約」の詳細は後ほど記載します。

文字だけ追っていると分かりづらいでしょうから、参考までにひとつ事例を紹介しましょう。

PE認定事例

(事例)

日本の半導体製造メーカーであるA社は、2000年以降海外に拠点を設立し、今では中国・東南アジアを中心に5つの拠点を有する企業に成長しました。

A社に勤務するB氏とC氏は、入社依頼10年超A社の営業畑(国内)で過ごしたセールスマンです。

現地法人の海外売上高が頭打ちになってきた昨今、タイの現地法人のテコ入れのため、B氏とC氏は、183日ルールに抵触しないように、3か月ごとに入れ替わりで日本とベトナムとを行き来するよう命じられ赴任することとなりました。

B氏とC氏は、現地法人の営業支援及び現地法人で扱っていない製品の商談に従事し、基本的にホテルと客先を往復しています。

この度、タイの現地法人に税務調査が入り、B氏とC氏の営業活動を問題視され、追徴課税を受けました。

なぜB氏とC氏の営業活動が問題視されたのでしょうか。

 

(問題点)

本件の場合、現地法人で取り扱っていない製品の販売については、日本と顧客との直取引となっており、タイの現地法人に所得が落ちていませんでした。

この点、日本法人がタイを拠点に営業活動を行っており、タイに日本法人の恒久的施設(支店)があるものとしてPE認定がなされ、B氏とC氏が稼得しょた所得相当額(売上-経費)について日本法人が課税されたのです。

PEというとすなわち拠点をイメージされる方が多いかと思います。

しかしながら、実際のPEの認定は、事務所を有するのみならず、いわゆる代理人PEとして人に紐づけてPE認定がなされる場合もあるのです。

その捕捉範囲は相当に広いことを認識しておかなければなりません。

このように国際税務リスクは、日常的なビジネスと密接に関係しており、その「落とし穴」はいたるところに潜んでいます。

居住地国

次に居住地国を確認していきましょう。

法人や個人がどの国に居住しているか、またはどの国に本拠地を置いているかを「居住地国」といい、個人または法人を指して一般的に「居住者」ないしは「居住法人」と呼びます。

「居住地国」の判定は、個人に対する183日ルールや、法人であれば、以下に示す「本店所在地主義」「管理支配地主義」「設立準拠法主義」などにより判定されます。

「居住地国」の主要な論点としては、各国の内国法でそれぞれ居住地国の要件が異なるため、日本及び他国の両方で居住者ないしは居住法人として認定されてしまうおそれがある点です。

この点二国間の二重課税を排除するために締結される租税条約を確認し、外国税額控除の適用等を通じた適切なアクションを行う必要があります。

これを放置していた場合には、二重課税を受けたままであったり、逆に無申告の状態が続き、悪質と認められれば重加算税等による思いがけない税務コンプライアンス上の問題に発展しかねません。

会計税務担当者は、特に注意が必要です。

法人の所在地国を判定する上で、重要な3つの考え方は次のとおりです。

本店所在地主義

国内に本店の所在地があれば内国法人として取り扱う制度をいいます。

設立準拠法主義

法人が設立された準拠法の所在国を内国法人として取り扱う制度をいいます。なお日本では、海外で日本の会社法を用いて会社を設立することは不可であるため、設立準拠法主義は本店所在地主義と同視されます。

管理支配地主義

管理支配地主義とは本店がどこにあるかにかかわらず、実質的に法人を管理支配している場所(グローバルな役員会の開催地等)が国内にあるか否かで内国法人か否かを判定する制度をいいます。

なお日本では、法人税法第2条第3号で内国法人について「国内に本店または主たる事務所を有する法人」としています。

また外国法人とは同法第2条第4号で「内国法人以外の法人」と規定しています。

したがって本店所在地主義(=設立準拠法主義)を採っています。

なぜ居住地国の判定が、重要かというと課税対象所得が大きく異なるためです。

居住地国が日本と判断されれば、全世界所得が課税対象となります(=ワールドワイド方式)。

一方で居住地国が国外と判断されれば、国内源泉所得のみが課税対象となります(=テリトリアル方式)。

ワールドワイド方式の場合には、特に現地で源泉徴収されている所得などをめぐって、二重課税リスクがつきまといます。

これを回避するために、外国税額控除(=海外で納めた税金を控除)や租税条約が認められるのです。

帰属主義と総合主義

平成26年税制改正で、外国法人に対する課税原則が従来の「総合主義」から「帰属主義」に大きく変更されました。

これは、OECDモデル条約に合わせ、国際的な二重課税・二重非課税の排除を目的とした国際的な協調が背景にあります。

従来は、外国法人の課税にあたり、すべての国内源泉所得を課税対象としていたところ、日本国内に所在する事業拠点(=恒久的施設|PE)に帰属する所得のすべてを課税対象とするとして、課税範囲を限定したことに大きな特徴があります。

したがって、税務上PEに帰属するか否かがきわめて重要になります。

ポイント

PEなくして課税なし

上述の「PEを有しない外国法人」等の「事業の所得」については、源泉所得税も法人税もまったく課税されません。

いわゆる「(自国内に)PEなければ(外国法人の事業所得への源泉地)課税なし」という、“国際的に共通の課税ルール”です。

内部取引

内部取引に係る損益認識に関して、PEと本店等との間で資産の移転、役務の提供等の行為があった場合には、独立企業間価格で内部取引を擬制することになります。

ここで、内部取引価格が独立企業間価格と異なる場合には、移転価格税制が適用され、独立企業間価格に合うように、PE帰属所得を加算調整される場合があります。

外国税額控除

日本国内にある外国法人のPEが本店所在地国以外の第三国で稼得した所得については、当該外国との間で二重課税が報じるため、日本のPEの対して外国税額控除が認められています。

また日本法人の国外PE帰属所得について、所在地国等で課税された場合には、日本で外国税額控除が適用されます。

租税条約

国内法は各国によって異なるため、同一所得について異なる国それぞれで国内源泉所得と認定され、国際的な二重課税が発生する場合があります。

こうした国際的な二重課税を排除する目的で定められた条約に租税条約があります。

適用順位

日本では租税条約は内国法に優先して適用されます。

一方でアメリカにおいては、租税条約と内国法は並列であり、新しいものを優先するといった規定を定めている国もあります。

また特にアジアの発展途上国においては、租税条約よりも内国法を優先しがちです。

すなわち租税条約に記載されていることを理由に安易に租税条約に従うと、判断を誤る場合があるため、注意が必要です。

二重課税を極力排除するためには、租税条約や内国法の整理だけでは足りません。

実質的な課税リスク(例えばアジア圏においては、租税条約どおりに実務上処理されないなど)を考慮した上で、商流や契約締結といった実際のビジネスの現場にどう落とし込んでいくか、頭を使う重要なポイントです。

締結国

平成29年5月1日現在に締結されていいる条約は68本で締結国は110の国と地域で締結されています。

183日ルール

最後にあげるのが183日ルールです。これは主に個人の帰属を判定する際に考慮する材料のひとつです。

183日ルールとは、一般的に個人を居住者と非居住者に区分する際に1年365日の過半数である183日を基準として、183日以上滞在していれば居住者とする世界的に一般的な共通ルールです。

しかしながら日本の所得税法では、居住者と非居住者を区分する方法として183日ルールを適用していません。

このため、国内法と外国法の判断基準が異なることにより、二国間で居住者として判定される場合があり得ます。

特に海外進出企業では役員及び従業員が日本と海外を往来するケースは多く、このような場合に該当するか否か注視する必要があります。

二国間で居住者として判定された場合には、二国間で締結された租税条約に従うことになります。

日本→米国

日米租税条約第14条の条件を全て充足すると、アメリカへ出張する際の日本の居住者の給与所得がアメリカの個人所得税の課税が免除されます。

1.アメリカ滞在期間が、継続する12か月間で累計183日以内である
2.出張者への報酬の支払者がアメリカ居住者でない
3.出張者への報酬がアメリカ国内にある恒久的施設によって負担されていない

なお、短期滞在者免税の適用にあたり、Forum8223の提出が必要です。

日本→シンガポール

日星租税条約第15条の条件を全て充足すると、シンガポールへ出張する際の日本の居住者の給与所得がシンガポールの個人所得税の課税が免除されます。

1.シンガポール滞在期間が、継続する12か月間で累計183日以内である
2.報酬が、シンガポールの居住者(シンガポールの現地法人等)又はこれに代わるものから支払われていない
3.報酬が、日本企業がシンガポール国内に保有するPE(恒久的施設)に負担されていない

なお、アメリカ・シンガポール共に、租税条約の対象となる給与所得には、役員報酬を含まないため注意が必要です。

すなわち役員にかかる給与については、居住地判定は日数だけでは無く、住居、職業、国内において生計を一にする配偶者その他親族を有するか否か、資産の所在等から総合的に判定されます。

(参照条文)

法法第2条第3号、法法第2条第4号

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東京都で働く公認会計士・税理士です。祖父・父親・叔父・弟も公認会計士や税理士の不思議な家系です。移転価格・組織再編・タックスヘイブンに強みがあります。ついついブログの投稿とダイエットは3日坊主です(笑)