一般労働者派遣事業で必要な監査証明って何?どこに頼むの?

平成27年9月、派遣法案が可決され、特定派遣が廃止されました。特定派遣事業をするにあたっては資産基準も必要なく、認可制でしたが、この改正を受け派遣事業は許可制となり、資産要件をクリアしないと事業に従事できなくなりました。

また派遣事業の許可を得ていない会社との取引は罰則対象となります。派遣業と許認可とは切っても切れ離せない関係となりました。

なお厚生労働大臣の許可が必要とされている(労働者派遣法5条)「一般労働者派遣事業」および「職業紹介事業」(以下、一般労働者派遣事業等)について、新たに許可申請または許可の更新しようとする会社は、公認会計士または監査法人(以下、会計士等)による監査証明が必要になることがあります。

税理士では監査証明業務を行うことはできません。また、公認会計士でも当該会社の顧問税理士をしている場合は、独立性確保の観点から監査を行うことはできません。

監査証明が必要な事業者さまは多く、当事務所にも月に2~3件ほどご相談にいらっしゃいます。ご相談に来るご依頼者さまの多くが監査証明が必要なことや認可要件を知らずに事業を進めてしまい、追加で増資するなどスタートで躓くことになってしまいました。

ビジネスはスピードが命です。認可要件や監査証明の有無など基本的なことについては、事業を始める前に固めてしまいましょう。

特に後述する緩和要件は、平成30年9月までですので注意してください!!

では、後で慌てることのないようこれから具体的な内容を確認していきます。



そもそも認可要件って何があるの?

一般労働者派遣事業等の認可要件は、一般労働者派遣事業と有料職業派遣事業で異なります。

以下の3要件をご覧ください。

認可要件を充足しない財務諸表でも、監査証明を出すことは可能ですが、認可要件を充足しない限り派遣事業の認可が下りることはありません。

認可要件を充足しない場合には、監査証明の有無に関わらず、事業をはじめることができない。

ということをまず覚えておきましょう。

基準資産要件

・一般労働者派遣事業
1事業所当たり基準資産額2,000万円以上

・有料職業紹介事業
1事業所当たり基準資産額500万円以上(更新時350万円)

負債比率要件

・一般労働者派遣事業
基準資産額が負債総額の1/7以上

・有料職業紹介事業
なし

現金預金要件

・一般労働者派遣事業
1事業所当たり自己名義の現金および預金額1500万円以上

・有料職業紹介事業
自己名義の現金および預金残高が、150万円+(職業紹介をする事業所数-1)×60万円

緩和要件

これまで説明した一般労働者派遣事業等の認可要件は、一部の事業者には緩和措置が認められています。

 一つの事業所のみを有し、常時雇用している派遣労働者が10人以下である中小企業事業主

・基準資産額1,000万円以上

・基準資産額が負債の総額の7分の1以上

・現金預金額が8百万円以上

一つの事業所のみを有し、常時雇用している派遣労働者が5人以下である中小企業事業主(施行日以後3年間:平成30年9月末まで!)

・基準資産額500万円以上

・基準資産額が負債の総額の7分の1以上

・現金預金額が4百万円以上

監査証明が必要になる場合

認可要件を適用を受けたい年度の直前の決算において充たす場合には、公認会計士による監査証明は不要です。

ただし直前期の決算では要件を充たさず、期中でどうしても許認可を取得する必要がある場合には、認可要件を充たした月次決算書を作成することにくわえ、公認会計士による監査証明が必要になります。

なおこの場合新規取得更新かで監査証明の種類が異なります。

新規取得の場合

新規取得の場合、独立監査人の監査報告書が必要になります。

監査証明において、公認会計士が実施するのは、資産要件を満たした中間・月次決算書等について「正しく作成されているか」を確認することです。

月次決算書等に計上されている資産は本当に会社に帰属するのか(実在性)や会社に計上されている負債の他に計上すべき負債はないか(網羅性)、会社の売上の中に前受金として処理すべきものはないか(期間帰属の妥当性)など、会社の貸借対照表及び損益計算書等を網羅的に検証します。

そのため後述する合意された手続きと比べ、監査対象範囲及びその検証の深度が深く、その分監査報告書発効までに時間と手間がかかる点に注意してください。事前に監査で依頼される必要書類は準備し、監査報告書をスムーズに受け取れるよう、公認会計士と十分なコミュニケーションを取ってください。

更新の場合

更新の場合、合意された手続き実施結果報告書が必要になります。

合意された手続において、公認会計士が実施するのは、資産要件を満たした中間・月次決算書等について主に「許可要件(基準資産要件、現預金要件、負債比率要件」に影響する項目を選択して確認することです。

このため、監査の対象を貸借対照表項目に限定し、損益計算書は見ないといったことも可能になります。

財務諸表全体の適切性を確認する独立監査人の監査報告書と異なり、手続きが軽減することから、その分リーズナブルな報酬でご依頼することができます。

監査証明に必要な資料

監査証明に必要な一般的な資料は、概ね以下の書類ないしはデータです。なお当事務所以外の先生にご依頼する際には、ご依頼先の先生によって追加で資料が必要なることもあります。

新規取得の場合も、更新の場合もご依頼させていただく必要書類は同じです。

(必要書類一覧)

・定款

・登記簿謄本

・月次決算書

・総勘定元帳
※総勘定元帳からサンプルで売上取引や仕入取引について、確証(契約書、請求書、入出金証憑など)を依頼します。

・通帳

・固定資産台帳(あれば)

・直近期の税務申告書

具体的なスケジュール

標準的なスケジュールは、概ねご依頼日から起算して7日~10日を目途に監査報告書または合意された手続き実施結果報告書を納品いたします。

(スケジュール)

・コンタクトフォームにて、監査証明が必要な旨のご連絡(貴社)

・必要書類や面談日の調整の連絡(当社)※面談が難しい場合は電話・テレビ会議など応相談

・必要書類の送付(貴社)

・監査手続き(当社)

・監査報告書の発行(当社)

コンタクトフォームはこちらです。

料金

ご参考までに当事務所の料金表を記載します。

監査証明には、発行者側にも責任やリスクが伴うため、監査に十分なリソースをかけなければならない点をご了承ください。

(新規取得の場合)

15万円~20万円

※会社規模やスケジュールによって増額させていただく場合がございます。

(更新の場合)

10万円~15万円

※会社規模やスケジュールによって増額させていただく場合がございます。

注意点

監査証明を依頼すれば100%監査証明がもらえるわけではありません。以下のような項目がある場合には、決算書の修正を求めることになり、修正した場合の決算書が認可要件を充足しないことになると、結果として認可がおりないことになります。注意してください。

(要注意項目)

・滞留債権

↑貸倒引当金の計上を通して、負債比率が高まります。

・売上の前倒し

↑利益剰余金の減少を通じて、負債比率が高まります。

・減価償却費の未計上

↑総資産の減少を通じて、負債比率が高まります。

・簿外債務

↑負債の増加を通じて、負債比率が高まります。

ABOUTこの記事をかいた人

東京都で働く公認会計士・税理士です。祖父・父親・叔父・弟も公認会計士や税理士の不思議な家系です。移転価格・組織再編・タックスヘイブンに強みがあります。ついついブログの投稿とダイエットは3日坊主です(笑)