第三者委員会とは何?日大・東芝問題から考える問題点

かつて東芝の会計不正において一躍名前が知られるようになった第三者調査委員会による不正調査。東芝不正会計問題では歴代社長3人による組織的な関与が認定されました。これにより歴代社長らは民事訴訟で30億円を超える損害賠償請求訴訟を会社から起こされることになりました。

第三者委員会の設置は、会計不正に限られません。ディー・エヌ・エーのキュレーションサイト問題といったコンプライアンスにかかる調査や、2020年東京オリンピック開催に向け、現状の予算・計画・ルール・体制についての妥当性を検証した東京都庁への調査など、幅広い分野で調査が行われます。

そんな徐々に身近な言葉になりつつある第三者委員会ですが、どうやら日大タックル問題についても、第三者委員会が設置され調査を行うようです。

ところで「第三者委員会」ってその中身を具体的に知っている人は少ないのではないでしょうか?「第三者委員会があれば真相究明まで万全」というわけではありません。現状担っている第三者委員会の役割と問題点についてまとめていきます。

ポイント
・第三者委員会は、CSRの観点から、ステークホルダーに対する説明責任を果たすために設置される。
・第三者委員会の報酬は、被調査会社がコーポレートガバナンス向上にかかる対価として負担する。
・独立性や調査手法について提言した日弁連ガイドラインがある。
・第三者委員会は、独立性や調査能力に現状問題を抱えている。
・第三者委員会を評価する格付け機関がある。

第三者委員会とは

目的

第三者委員会とは、直接の利害をもたない中立的な第三者によって構成される委員会で、第三者機関ともいいます。官公庁、企業などで不祥事が発覚した場合に設置され、調査報告書の作成や公表を行います。

第三者委員会は、不祥事を起こした企業等が、企業の社会的責任(CSR)の観点から、ステークホルダーに対する説明責任を果たす目的で設置します。

第三者委員会の行動は、大きく「事実の調査」と「再発防止策の提示」に分かれ、不祥事を起こしてしまった企業から依頼を受け、不祥事に関する事実関係を調査することによって原因と責任の所在を明らかにします。その上で、再発防止策を提示することまで求められます。

主な委員の属性

メンバーは、企業法務に詳しい弁護士や公認会計士などのなかから選ばれることが多いです。

なお日弁連が公表する「企業等不祥事における第三者委員会ガイドライン」によると、以下のような委員の属性が望ましいとされています。

委員の数

第三者委員会の委員数は3名以上を原則とし、顧問弁護士は利害関係者として除く。

委員の適格性

第三者委員会の委員となる弁護士は、当該事案に関連する法令の素養があり、内部統制、コンプライアンス、ガバナンス等、企業組織論に精通した者でなければならない。第三者委員会の委員には、事案の性質により、学識経験者、ジャーナリスト、公認会計士などの有識者が委員として加わることが望ましい場合も多い。この場合、委員である弁護士は、これらの有識者と協力して、多様な視点で調査を行う。

調査を担当する専門家

第三者委員会は、事案の性質により、公認会計士、税理士、デジタル調査の専門家等の各種専門家を選任できる。これらの専門家は、第三者委員会に直属して調査活動を行う。

具体的な調査

では、具体的に第三者委員はどのように調査を行うのでしょうか。ここでは、設置・調査・公表の順に説明していきます。

設置

まず、不正が発覚した場合に、いきなり第三者委員会を設置するわけではありません。通常は、内部通報であれば通報内容の評価を行い、管理部門等による初動調査を行います。初動調査を行った結果、ステークホルダーへの影響を勘案し、外部公表の必要性を判断します。その上で影響が重要で更なる実態調査が必要と判断した場合に、社内調査委員会や第三者調査委員会を設置することになります。

(調査深度)

管理部門による調査<<<<社内調査委員会<<<<<<<<<<第三者調査委員会

調査

実際の調査の段取りは以下のとおりとなることが一般的です。

(調査スケジュール)

・調査メンバーの選定
弁護士以外の専門家の必要性

・調査の計画立案
公表までのスケジュール
調査スコープの選定
報酬見積

・調査の実施
情報収集・分析
仮説の立案およびその検証
不正関与者へのインタビュー

・結果の取纏め
是正措置の立案
関係者の処分
当局対応の検討

・報告書の作成と公表
公表用報告書の作成
公表対応の検討

・是正措置の実行
緊急対応措置の実行
抜本的対応措置の立案、実施、モニタリング

公表

公表は、各ステークホルダーへの影響を考慮して、個別にまたはプレスリリースを通じて行われます。

・東証・SESC・税務署・金融機関・株主・得意先・警察・従業員などステークホルダーは多岐にわたります。

ここでの対応を誤ると、せっかく深度ある調査を行っても、かえって企業の社会的な信用を失うことにも繋がりますので、慎重に対応を検討しなければなりません。

問題点

実際に設置された第三者委員会の中には形だけの「第三者」を揃え、経営者等の意向に沿った報告書を作成してもらってその場をしのごうとする意図が透けて見えるものも存在します。

またキーマンとなる人物へのインタビューができなかったり、弁護士以外の必要な専門家がメンバーに加えられず深度ある調査ができていなかったり、とても真相究明にはほど遠い内容の調査報告書も公表されています。

このように第三者委員会は、委託者と受託者それぞれに現状問題を抱えています。

独立性

委託者の問題として、独立性の確保が挙げられます。第三者委員会の機能が果たされるためには、第三者委員会の客観性・中立性に対する信頼が必要となりますが、通常第三者委員会の選定は、不祥事の当事者でもある経営陣が人選を行う場合が多く、またその報酬の負担も被調査会社が負担することになります。

本来は、社外取締役などが中心になり第三者委員会の選定を行い、被調査会社が速やかに不祥事から立ち直り、社会の要請にいち早く応えるのが理想でしょう。この場合はコーポレートガバナンス向上の対価として、第三者委員会が相応の報酬を受け取るのは至極全うだと考えます。したがって調査の中立性の問題と報酬負担とは本来切り離して考えられるべきものです。

しかしながら前述したとおり、第三者委員会の選定及び報酬交渉を、本来調査対象となるはずの経営陣が行うことで、第三者委員会の独立性に疑義が生じている事案が数多くあるのが現状です。

「形式的な」第三者委員会の設置になっていないか、メンバーの人選や経緯についてのプロセスをより透明化して開示することが、今後求められてくると考えます。

調査能力

受託者の問題として、調査能力の欠如が挙げられます。原則として、日弁連のガイドラインに従った調査を行うことが推奨されていますが、個別具体的な調査方法について記載されているわけではありません。

ガバナンスの問題点についての言及がないなど当ガイドラインの趣旨を汲んですらいない報告書は論外として、例えば調査スコープが必要以上に限定されていたり、事実と推測がごっちゃになった作文大会になったり、インタビュースキルに乏しくキーマンから確信的な供述を引き出せていなかったりと、「なんちゃって調査報告書」が数多く出回ってしまっています。

こうした「なんちゃって調査報告書」のコピペと思われるような調査報告書も散見され、現状は調査能力がある専門家が本当に調査しているのか、疑念を持たれるレベルにあります。

評価機関

こうした第三者委員会の問題点を憂慮し、有識者により構成された「第三者委員会報告書格付け委員会」があります。

第三者委員会報告書格付け委員会ホームページ

第三者委員会等の調査報告書を「格付け」して公表することにより、調査に規律をもたらし、第三者委員会及びその報告書に対する社会的信用を高めることを目的としています。

調査の格付けは、委員会での議論に基づき、各委員が、A、B、C、Dの4段階で評価しています。なお、内容が著しく劣り、評価に値しない報告書についてはF(不合格)としています。

実際に過去の格付け結果をご覧ください。

 

最頻値がF評価とされた事案が直近12件中3件にも上ります。なお評価が特に割れた東洋ゴム工業については、第三者委員会の委員長から反論文書が送付されるなど、第三者委員会のあり方そのものについてまで言及されています。

評価委員が担当する事案についてもかなりバッサリ斬られている事案もあり、身内だからといって容赦しない姿勢からかなり厳格な評価がなされている印象があります。※評価委員が担当する事案では、本人は格付けに参加しない。

総評を見ると、独立性・客観性の観点から、問題のある第三者委員会が設置されているケースが後を絶ちません。透明性・客観性を担保する上で、第三者委員会の設置までのプロセスを透明化し、適切に開示する姿勢が直近でまず求められている課題といえるでしょう。

ABOUTこの記事をかいた人

東京都で働く公認会計士・税理士です。祖父・父親・叔父・弟も公認会計士や税理士の不思議な家系です。移転価格・組織再編・タックスヘイブンに強みがあります。ついついブログの投稿とダイエットは3日坊主です(笑)