消費税の罠。高額特定資産に注意!!

事業が軌道に乗り出すと、車や店舗の内装・事務所の建設など、高額な資産を購入する機会があります。また、収益性不動産(マンションや太陽光発電など)で事業投資を行う際にも、購入する資産の金額はかなり大きなものとなります。

これらの資産を取得する際に気を付けるポイントとして、高額特定資産に関する消費税の制度があります。

高額特定資産に関する消費税の概要は、1,000万円を超える資産を購入したときには、以後3年間は免税事業者や簡易課税事業者になることができないという制度です。

この制度のポイントを、以下の点を中心に解説していきます。

・なぜこの制度が作られたのか?(背景)

・対象となる資産は何か?(固定資産だけでなく棚卸資産も含む)

・改正前後で消費税額がどれだけ変わるのか?(影響額の試算)

高額特定資産が設けられた背景

なぜこのような制度が設けられたのでしょうか。それは、消費税法の穴を突いたスキームが流行し、税金の還付を受けようとするケースが増えてきたからです。

特に有名なのは、『自販機設置スキーム』です。

例えば、居住用の賃貸事業を開始するためにマンションを建てた場合、建てた直後に賃貸料(非課税売上)が発生すると課税売上割合が下がるため、マンション建設に係る消費税の還付を受けられる金額が減ります。

そこでマンションを建てた年度には賃貸料を発生させず、マンションに併設した自販機による課税売上だけを発生させると、課税売上割合はほぼ100%となるため、マンション建設に係る消費税の還付を全額受けることができます。

そして翌年度からは免税事業者か簡易課税事業者になれば、調整対象固定資産の対象外にもなるため、消費税の調整(支払)も不要になるという内容でした。

(具体例は3章のケース①を参照)

他にも太陽光発電などの収益性不動産を利用した消費税の還付事例が多発したため、その防止策として高額特定資産の制度ができることとなったのです。

ちなみにこの制度は平成22年度より施行されることとなりましたが、平成28年より対象範囲が棚卸資産まで拡大されたことにより、上記のスキームはほぼ使えなくなりました。


(参考記事)

消費税の計算方法の説明

簡易課税制度の説明


高額特定資産の要件

では、どのようなものが高額特定資産の対象となるのでしょうか。

ざっくり言うと、『一単位で税抜の金額が1,000万円以上のもの』です。

例えば・・・

税込1,080万円の大型設備を購入した時は税抜1,000万円で高額特定資産に該当しますが、税込1,000万円の場合は税抜926万円で該当しません。

また、購入に関する付随費用も資産の価額に含まれる点はご注意ください。

Junichi税理士
付随費用についての考え方は、資産計上と同じです

実務では下記のようなケースで当てはまることが多いかと思います。

・高級社用車を購入した。

・自宅兼事務所を建てた(事務所部分が1,000万円を超えるとき)。

・事務所の大規模改装を行った場合(資産計上に限る)。

・事業規模が大きくなり、1単位1,000万円以上のものを仕入するようになった。

このような場合は高額特定資産であることを見逃してしまう可能性がありますので、十分に注意してください。高額特定資産に該当した場合、以後3年間は原則課税の縛りが発生します。

高額特定資産による消費税額の変化

では、これから2つのケースを参考にして、改正前と改正後による消費税額の影響を具体的に見ていきましょう。

Junichi税理士
文章ばかりでイメージつかんという方は是非数字を追って納得してください。

税額を見ると結構な差が生じていることが分かります。もし高額特定資産に対する消費税額の計算ができていなかった場合、差額分の追徴プラス延滞税を払わなければなりません。

高額特定資産がある場合には、安易に課税事業者を選択することによる税額還付を取るよりも、簡易課税制度を受けた方が税額が低くなる場合があります。単年度の数字だけでなく、向こう3年程度の収支予測を立てたうえで、有利・不利をケースバイケースで十分検討するようにしましょう。

ABOUTこの記事をかいた人

東京都で働く公認会計士・税理士です。祖父・父親・叔父・弟も公認会計士や税理士の不思議な家系です。移転価格・組織再編・タックスヘイブンに強みがあります。ついついブログの投稿とダイエットは3日坊主です(笑)