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電子帳簿保存法と令和3年度改正のまとめ
Contents
概要
電子帳簿保存法とは
電子帳簿保存法は、1998年7月に制定された法律です。国税関係帳簿書類(会計帳簿やその根拠となる証憑類等)の全部または一部について電子データによる保存が認められています。
電子帳簿で保存可能な書類
電子帳簿で保存可能な主な書類は、以下のとおりです。
帳簿(電子データのみ):総勘定元帳、補助元帳、現金出納帳、売掛帳、買掛帳、経費帳、仕訳帳、固定資産台帳、棚卸台帳
決算書類(電子データのみ):損益計算書、貸借対照表、株主資本等変動計算書など
証憑書類(電子データとスキャン可):レシート、請求書、領収書、納品書、契約書、約束手形など
電子帳簿保存の承認申請
提出時期
電子帳簿保存法を適用するためには、承認を受けようとする国税関係帳簿の備付けを開始する日の3月前の日までに所轄税務署に事前申請を行う必要があります。
提出方法
申請書を1部(承認を受けようとする帳簿が次に該当する場合は2部)作成し、添付書類を添付の上、提出先の所轄税務署に持参又は送付してください。
①国税局において課税標準の調査及び検査を行うこととされている法人の法人税及び消費税に係る帳簿
➁国税局において課税標準の調査及び検査を行うこととされている製造場等の酒税、たばこ税、揮発油税、地方揮発油税、航空機燃料税、石油ガス税、石油石炭税、印紙税、電源開発促進税及び国際観光旅客税に係る帳簿
添付書類・部数
①承認を受けようとする国税関係帳簿の作成等を行う電子計算機処理システムの概要を記載した書類 1部
➁承認を受けようとする国税関係帳簿の作成等を行う電子計算機処理に関する事務手続の概要を明らかにした書類(当該電子計算機処理を他の者に委託している場合には、その委託に係る契約書の写し) 1部
③申請書の記載事項を補完するために必要となる書類その他参考となるべき書類 1部
電子帳簿の保存要件
電子帳簿保存法では書類の保存方法は電子データ保存する方法とスキャンナーによる保存する方法の二つに分かれています。
電子データ保存する場合
真実性の確保
訂正・削除履歴の確保(帳簿)
帳簿に係る電磁的記録にかかる記録事項につぃいて訂正または削除を行った場合、及び帳簿にかかる記録事項の入力をその業務の処理にかかる通常の期間を経過した後に行った場合には、これらの事実及び内容を確認することができる電子計算機処理システムを使用すること。
相互関連性の確保(帳簿)
帳簿に係る電磁的記録の記録事項とその帳簿に関連する他の帳簿の記録事項との間において、相互にその関連性を確認できること。
関係書類等の備付け
システム概要書、システム仕様書、操作説明書、事務処理マニュアル等のシステム関係書類を備付けを行うこと。
可視性の確保
見読可能性の確保
帳簿に係る電磁的記録の保存等をする場所に、その電磁的記録の電子計算機処理の用に供することができる電子計算機、プログラム、ディスプレイ及びプリンタ並びにこれらの操作説明書を備え付け、その電磁的記録をディスプレイの画面及び書面に、整然とした形式及び明瞭な状態で、速やかに出力できること。
検索機能の確保
帳簿にかかる電磁的記録について、取引年月日、勘定科目、取引金額その他のその帳簿の種類に応じた主要な記録項目を検索条件として設定ができ、日付又は金額に係る記録項目については、その範囲を指定して条件を設定することができること。又は、二つ以上の任意の記録項目を組み合わせて条件を設定することができること。
スキャナによる保存する場合
スキャナによる保存する場合は、スキャンする書類の区分により「重要書類」と「一般書類」にわかれ、要件が異なります。
「重要書類」:資金や物の流れに直結・連動する書類。契約書、納品書、請求書、領収書などがあります。
「一般書類」:資金や物の流れに直結・連動しない書類。見積書、注文書、検収書などがあります。
入力期間の制限
「重要書類」:受領後、速やか(おおむね7営業日以内)に行うこと。
「一般書類」:適時に入力
解像度及び読み取り
「重要書類」:解像度200dpi以上で、赤・緑・青の解像度が256階調以上 (24ビットカラー)。
「一般書類」:グレーケースでも問題ありません。
タイムスタンプの付与
「重要書類」:一般財団法人日本データ通信協会が認定する業務に係るタイムスタンプを付与。
「一般書類」:受領者等が読み取る場合は受領者が署名をした上、おおむね3営業日以内にタイムスタンプを付与。
読取情報の保存
「重要書類」:読み取った際の解像度、階調及び当該国税関係書類の大きさに関する情報を保存すること。
「一般書類」:大きさに関する情報の保存は不要です。
バージョン管理
「重要書類」も「一般書類」も:訂正又は削除宇を行った場合には、これらの事実及び内容を確認することができること。
入力者等情報の確認
「重要書類」も「一般書類」も:入力を行う者又はその者を直接監督する者に関する情報を確認できること。
適正事務処理要件
「重要書類」:受領等から入力までの各事務について、相互牽制、定期的な検査、再発防止に定めて処理すること。
「一般書類」:不要
帳簿との相互関連性の確保
「重要書類」も「一般書類」も:国税関係書類に係る電磁的記録の記録事項と当該国税関係書類に関連する国税関係帳簿の記録事項との間において、相互にその関連性を確認できること。
見読可能装置の備付け等
「重要書類」:14インチ以上のカラーディスプレイやカラープリンタ並びに操作説明書を備え付け、電磁的記録を整然とした形式で該当国税関係書類と同程度明瞭に拡大縮小して印刷できること。4ポイントのサイズの文字を認識できること。
「一般書類」:グレースケールで保存している場合はカラープリンタに変更は不要です。
システムの開発関係書類等の備付け
「重要書類」も「一般書類」も:電子計算機処理システムの概要、操作説明書、開発時の書類及び保存に関する事務手続き書類を備え付けること。
検索機能の確保
「重要書類」も「一般書類」も:取引年月日・勘定科目・取引金額その他の主要な記録項目を検索でき、金額範囲を指定して検索でき、また、2つ以上の任意項目を組み合わせて検索できること。
電子取引の保存要件
真実性の要件
①タイムスタンプが付された後、取引情報の授受を行う。
➁取引情報の授受後、タイムスタンプを付すとともに、保存を行う者又は監督者に関する情報を確認できること。
③記録事項の訂正・削除を行った場合に、これらの事実及び内容を確認できるシステム又はできないシステムで取引情報の授受及び保存を行う。
④正当な理由がない訂正・削除の防止に関する事務処理規程を定め、その規程に沿った運用を行う。
可視性の要件
①保存場所に、電子計算機、プログラム、ディスプレイ、プリンタ及びこれらの操作マニュアルを備付け、画面・書面に整然とした形式及び明瞭な状態で速やかに出力できること。
➁電子計算機処理システムの概要書を備付けること。
③検索機能を確保すること。
令和3年の税制改正
電子帳簿等保存の改正
税務署長の事前承認が廃止
これまで、電子的に作成した国税関係帳簿を電磁的記録により保存する場合には、事前に税務署長の承認が必要でしたが、令和3年の改正により、令和4年1月1日より事前承認が不要となりました。
申告加算税の軽減措置
優良な電子帳簿の要件を満たして、その電子帳簿に記録された事項に関し申告漏れがあった場合には、その申告漏れに課される過少申告加算税が5%軽減されます。
しかし、隠蔽又は仮装された事実がある場合には、軽減措置の適用はできません。
最低限の要件を満たす電子帳簿も可能
正規の簿記の原則に従って記録される者に限られます。他の要件については、電子帳簿の保存要件の概要をご確認ください。
【出典:国税庁「電子帳簿保存法が改正されました」】
スキャナ保存の改正
税務署長の事前承認が廃止
タイムスタンプ、検索要件の緩和
⑴ タイムスタンプの付与期間が、最長約2か月と概ね7営業日以内となりました。
⑵ 受領者等がスキャナで読み取る際の国税関係書類への自署が不要となりました。
⑶ 訂正又は削除を行った場合に、これらの事実及び内容を確認することができるクラウド(できないクラウドも含まれる)等において、入力期間内にその電磁的記録の保存を行ったことを確認することができるときは、タイムスタンプの付与に代えることができることとされました。
⑷ 検索要件の記録項目について、取引年月日その他の日付、取引金額及び取引先に限定されるとともに、税務職員による質問検査権に基づく電磁的記録のダウンロードの求めに応じる場合には、範囲指定及び項目を組み合わせて条件を設定できる機能の確保が不要となりました。
適正事務処理要件が廃止
重加算税の加重措置が整備
適正な保存を担保するための措置として、スキャナ保存が行われた国税関係書類に係る電磁的記録に関して、隠蔽し、又は仮装された事実があった場合には、その事実に関し生じた申告漏れ等に課される重加算税が 10%加重される措置が整備されました。
電子取引の改正
タイムスタンプ要件及び検索要件の緩和
タイムスタンプ要件に係るタイムスタンプの付与期間及び検索要件に係る検索項目について「スキャナ保存に関する改正事項」の2(1)と(4)と同趣旨の改正が行われたほか、基準期間の売上高が 1,000 万円以下である小規模な事業者について、税務職員による質問検査権に基づく電磁的記録のダウンロードの求めに応じることができるようにしている場合には、検索要件の全てが不要となりました。
適正な保存を担保する措置
⑴ 申告所得税及び法人税における電子取引の取引情報に係る電磁的記録について、その電磁的記録の出力書面等の保存をもってその電磁的記録の保存に代えることができる措置は、廃止されました。
⑵ 電子取引の取引情報に係る電磁的記録に関して、隠蔽し、又は仮装された事実があった場合には、その事実に関し生じた申告漏れ等に課される重加算税が 10%加重される措置が整備されました。
なお、上記改正はすべて令和4年1月1日以後に備付けを開始する国税関係帳簿について適用となります。
電子帳簿保存のメリット・デメリット
メリット①コストの削減
電子データ保存にすれば、資料の保管場所とその管理やコピー用紙などの経費を削減することができ、書類管理の効率化にもつながります。
メリット➁生産性の向上
紙ベースで保存・保管していた資料を電子データ化することは、コスト削減だけではなく、業務の改善や人材などのリソースをコア業務に集中させることができ、業務の生産性向上が期待できます。
メリット③クラウドで操作が可能
コロナウイルスの影響で在宅ワークの数も増えてきております。クラウドの請求書サービスなどを使用すれば、受領した請求書の電子保存が可能となり、リモートでの作業も可能になります。
デメリット①導入コストがかかる
クラウドの導入やスキャナ保存するためにシステムの導入等によるコストがかかります。
デメリット➁会計ソフトの不備
市販の会計ソフトの中には、記録したデータの訂正や削除の履歴を確認することができないため、電子帳簿保存法の要件に充たすことができません。
まとめ
令和4年1月1日より、電子帳簿保存法の要件は大きく緩和され、中小企業においても適用可能な水準にまで、税務当局は大きく歩み寄ることになりました。
デジタル庁の創設やデジタルトランスフォーメーションが進む中アナログな紙媒体での保管というのは、徐々になくなっていくことになるでしょう。
一方で原本の確認が不要になると、改ざんや隠ぺいといった不正が行われる機会が多くなります。税務当局はこうした不正が行われる状況を強く危惧しています。
社会の要請に応じて要件を緩和する一方で、不正発覚時には重加算税のペナルティを課すことで、うまくバランスを取ろうとする姿勢がうかがえます。
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