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2018.07.09
  • 会計税務顧問
  • 税務調査

EXILEが脱税!?東京国税局が3億円の申告漏れを指摘!

EXILEが脱税!?東京国税局が3億円の申告漏れを指摘!

人気グループ「EXILE」などが所属する事務所「LDH JAPAN」に東京国税局の調査が入り、2017年3月期までの4年間で約3億円の法人税などの申告漏れを指摘されていたことが5日に報道されました。関係者によると過少申告加算税を含めた追徴税額は約6000万円とされています。

https://www.youtube.com/watch?v=WFLbuvG-DWk

出典:ANNニュース

税務当局との見解の相違によるもので、最終的には税務当局の指摘にしたがって修正申告を行っています。重加算税が課されるような悪質な脱税ではないわけですが、報道による企業イメージの毀損は重大ですね。

とはいえ、どういった点が申告漏れと指摘されたかについては、あまり報道されておらず、いまいちピンときません。そこで限られた情報の中ではありますが、指摘された内容についてポイントとなる事項をまとめていきます。

なおNHKニュースによると、以下の2点が大きく争点になったようです。

(飲食費について)

去年3月期までの4年間にツアーの打ち上げで取引先などと会食した接待飲食費のうち、本来は経費としては認められない上限額を超えた部分についても経費に計上して利益を少なく申告していたということです。

(業務委託費について)

また、海外にある関連会社への業務委託費用の計上時期の誤りなど、経理ミスも含めて、東京国税局からおよそ3億円の申告漏れを指摘されたということです。

Contents

飲食費について

少し古い情報ですが、LDH JAPANの決算公告を見てみましょう。

資本金は18百万円ですので、税法上は資本金1億円以下の中小法人に該当します。
この場合は、接待交際費として①年800万円または②飲食費(専らその法人の役員若しくは従業員又はこれらの親族に対する接待等のために支出するものを除く)の50%のいずれか大きい方の金額が損金算入できる金額です。

LDH JAPANの会社規模からして②飲食費の50%が損金算入できる限度額になるでしょう。したがってニュース報道のうち、「本来は経費としては認められない上限額を超えた部分についても経費に計上していた」という指摘は、この部分を指しているものと考えられます。

では、なぜ接待交際費として計上していなかったのでしょうか。これはおそらくですが、ツアーにかかる費用については、打ち上げも込みで事業経費として考えていたためではないでしょうか。打ち上げについてはあくまでツアー関連費用の一部であり、得意先や仕入先に対する接待・贈答・慰安などとは異なると考えたためだと考えます。

例えばツアーにかかる経費が全体で年間50億円、その中で打ち上げにかかる費用を1億円とすると以下の仕訳です。

(借方)ツアー関連費用50億円/(貸方)CASH50億円

 

これを東京国税局からは、以下の仕訳になるはずだと指摘されたわけですね。

(借方)ツアー関連費用49億円/(貸方)CASH49億円

(借方)接待交際費1億円/(貸方)CASH1億円

打ち上げ代もツアーにかかった費用の一部を構成するので、他と区分せず費用処理できるとするのが、LDH JAPANの主張です。しかし当局は打ち上げ費用はツアー関連費用とは分けて考えるべきだと指摘しています。この点LDH JAPANは見解の相違と言っているわけですね。

なお今回既に修正申告に応じていますので、最終的には税務当局の指摘を認め、不服申し立てなどにより今後争うわけではありません。


(参考記事)

接待交際費と会議費について


業務委託費について

「海外にある関連会社への業務委託費用の計上時期の誤り」とある点、これはどういうことなのでしょうか。

LDH JAPANは、以下の海外拠点を有しています。これら海外拠点への業務委託費の計上時期について、問題とされたようです。

  • 株式会社LDH ASIA(代表取締役CEO:松田誠、取締役:橘ケンチ
  • LDH EUROPE B.V.(CEO:Afrojack
  • LDH USA Inc.(CEO:森広貴)

こちらについては、詳細は不明なので、あくまで推測に過ぎませんが、例えば海外拠点でのイベントを委託する際に、委託業務(イベント)が完了する前に支払いベースで費用計上していた可能性があります。

例えばツアーにかかる経費が全体で50百万円を一括して前払いした際には、以下の仕訳です。

(借方)業務委託費50百万円/(貸方)CASH50百万円

これを東京国税局からは、業務委託費に相当する役務提供が完了(イベントが完了)してから、費用に計上すべきだと指摘されたわけですね。この場合は、費用(PL)ではなく資産(BS)に計上します。

費用が減少することで利益が増え、納める税額が増えるというわけです。グループのキャッシュはLDH JAPANが潤沢に持っているのでしょうから、海外拠点がイベントを作っていくうえで必要になる運転資金を用意している側面があったのではないかと推察します。

(借方)前渡金50百万円/(貸方)CASH50百万円

悪質性について

LDH JAPANが税務調査で指摘を受けたのは、実は今回がはじめてではありません。2010年にも同じように3億円の申告漏れを指摘されています。

ただ今回と違うのは、前回は仮装・隠蔽行為が指摘され、重加算税を納めている点です。いわゆる脱税ですね。

具体的には、関係会社に実際より過大な制作原価を支払い、一部をLDH JAPANに親密な取引先に流していたようです。関係会社に所得移転して脱税を図った点かなり悪質といえますね。

それと比べると、今回の申告漏れは税額から見ても重加算税の対象になっていないようですので、見解の相違とするLDH JAPANの説明は合理的ではないでしょうか。合法的な節税だという認識のもとグレーゾーンを攻めた結果、主張が認められなかった分を今回納税したと考えるのが自然だと思います。

LDH JAPANの売上高は純利益27億円から逆算すると、300億円~500億円くらいありそうです。東証1部上場企業と比べても見劣りしない規模ですね。業績が絶好調で税務調査に入られる場合に、無傷で済むことはあまりありません。会社規模に比べて3億円の申告漏れはあまり大騒ぎする金額ではないのかなというのが個人的な印象です。

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