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住民税の特別徴収の基本から応用まで。対応方法完全版!
最近、住民税の特別徴収を徹底する方針の市区町村が増えています。たとえば、2017年度を例にすると、東京都と都内全62区町村は徹底する方針を打ち出しています。住民税の特別徴収について、もはや会社経営者であれば知らなかったでは済まされない状況になりつつあります。そこで基本的な内容からイレギュラーなケースの対応方法について具体的に説明します。
Contents
そもそも住民税の特別徴収とは
住民税の特別徴収とは、役員や従業員の住民税を給料から天引きして、会社が納付する制度です。特別徴収の反対語は普通徴収であり、住民税を年4回に分割して自分で納付することを指します。特別徴収のおもな特徴を紹介します。
会社は特別徴収が原則
会社または役員や従業員が自由に「特別徴収」か「普通徴収」を自由に選択することはできません。それはパート、アルバイトにも当てはまります。また、事務手続きが大変さを理由で普通徴収を選択することも認められません。
住民税は市区町村が自動計算をする
前年の所得金額をベースに市区町村が住民税を自動計算します。そのため、給料から天引きされる源泉所得税と違い、市区町村から通知された住民税の金額を納付するだけで済みます。
住民税は預り金である
給料から天引きするということは役員や従業員から住民税を預かっていることを意味します。事業資金とは違うため、たとえ業績が苦しくても滞納を認めないというのが市区町村の基本的なスタンスです。
住民税を滞納した場合のリスク
特別徴収の住民税を滞納した場合、納期限後20日以内に市区町村から督促状が発送されます。督促状が届いたのもかかわらず住民税を納付しない場合、市区町村は職権で財産差し押さえなどの滞納処分が可能です。また、役員や従業員が住民税の納税証明書を取得できず、不利益を被ってしまいます。
特別徴収の事務手続き~東京都内の市区町村の場合~
事務手続きの流れは次のイラストの通りです。
出典:東京都
それでは、手続きについて具体的に説明していきます。
給与支払報告書の提出
年末調整で計算した前年の所得金額の明細書である給与支払報告書へ1月31日までに市区町村へ提出します。ちなみに給与支払報告書は源泉徴収票と同じ書式です。今はeLTAX(エルタックス)により電子申告をすることが可能であり、印刷して郵送する手間が省けます。
住民税の金額が会社へ通知される
5月末までに役員や従業員ごとの住民税の金額が会社へ通知されます。この通知書のことを「特別徴収税額決定通知書」といい、役員や従業員に渡します。
住民税を給料から天引きし、納付する
給料から天引きした住民税を納期限までに納付します。今は横浜市や川崎市ではeLTAX(エルタックス)により電子納付が可能です。東京都の市区町村は住民税の電子納税に対応していませんが、普及すれば金融機関の窓口へ出向く手間を省けることが期待できます。
計算期間と納期限
手続きの確認ができたら、次は実際の納付方法の確認です。住民税の計算期間と納期限は次の通りです。
計算期間
前年の所得金額をベースに住民税を計算し、計算期間は6月~翌年5月までとなります。月割額(年税額のほぼ12等分)を給料から天引きし、納期限までに納付することになります。
納期限
納期限は原則通りの「毎月納付」と年2回納付の「納期の特例」に区分されます。
(1)毎月納付
月割額を給与支払日の翌月10日(その日が土日祝の場合はその翌日)が納期限となります。
(2)納期の特例
月割額の6カ月分を年2回納付します。納期限は次の通りです。
6月~11月までの分:12月10日
12月~翌年5月までの分:6月10日
納期の特例を受けられる条件は市区町村ごとに定められており、ここでは東京都中野区を例に説明します。条件は次の通りです。
従業員が全社で常時10人未満
中野区において住民税の滞納がない
中野区で過去に納期の特例の取消を受けた場合は、取り消しを受けてから1年以上経過している
承認申請の時期は納期の特例を受けようとする月の20日までを奨励している
特に承認申請の時期については事前に各市区町村に問い合わせをおすすめします。
また、計算期間の途中から納期の特例を受ける場合の納期限は次の通りです。
(例)10月から納期の特例を受ける場合の納期限
6月、7月、8月、9月に給料から天引きした住民税:それぞれの給与支払日の翌月10日
10月から11月に給料から天引きした住民税は:12月10日
12月から5月に給料から天引きした住民税は:6月10日
ただ、納期の特例を受ける場合でも給料から天引きは毎月行う必要があります。
中途で入社した場合
次にイレギュラーなケースをみていきましょう。計算期間(6月~翌年5月)の途中で中途入社した場合、何も手続きをしなければ、翌年の計算期間まで、中途入社した本人は普通徴収により自分で住民税を納付することになります。
しかし、中途で入社した本人が普通徴収から特別徴収への切り替えを申し出た場合、「特別徴収への切替申請書(市区町村によって名称は異なります)」を市区町村へ提出します。
ただし、申請時点で普通徴収の納期限が過ぎている住民税の切替はできません。
退職した場合
次に計算期間の途中で役員や従業員が退職した場合、退職日によって次のように取り扱います。
(1)退職日が1月1日~4月30日の場合
退職した月から計算期間の最終月である5月までの住民税を一括で給料から天引きして、給与支払日の翌月10日までに納付します。
(2)退職日が5月中の場合
5月分の住民税を給料から天引きして、6月10日までに納付します。つまり、特別な事務手続きはありません。
(3)退職日が6月1日~12月31日の場合
退職月分の住民税を給料から天引きして、給与支払日の翌月10日までに納付します。残りの住民税は普通徴収で退職した役員や従業員が自分で納付します。しかし、計算期間の最終月である5月までの住民税について一括で給料から天引きを希望する場合は、給与支払日の翌月10日までに納付します。
特別徴収から普通徴収への切替
最後に特別徴収から普通徴収への切替についてです。特別徴収から普通徴収への切替は原則できませんが、次の場合は特別に認められます。
従業員の数が全社で2人以下の場合
他の会社で特別徴収をしている場合(副業でアルバイトをしている場合など)
給料から住民税が天引きしきれない場合
給料の支払いが不定期の場合(給料の支払いが毎月でない)
個人事業者に限り、家族しか従業員がいない場合
退職者または5月末日までの退職予定者
まとめ
会社は給料を支払い以上、住民税の特別徴収が原則となります。住民税は事業資金ではなく、預り金のため、たとえ業績が苦しくても滞納は原則認められません。そのため、預かった住民税を滞納しないためには、資金繰り表などを活用し、日ごろの資金繰りの管理が重要となってきます。
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