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2018.06.01
  • 会計税務顧問

知らないと損する「資本金」と「資本金等の額」の違い

知らないと損する「資本金」と「資本金等の額」の違い

税法上では、資本金と資本金等の額を明確に区分しています。しかし、両者は似たような用語であるため、その違いを理解するのは難しいでしょう。しかも、そもそも資本金と資本金等の額の違いを理解する大切さについての情報は決して多いとはいえません。

そこで、両者の違いを理解する大切さと違いを中心に解説します。

Contents

なぜ資本金と資本金等の額の違いを理解することが大切なのか?

資本金と資本金等の額をきちんと理解しないと法人が不利益を被るリスクがあります。しかもその結果、軌道修正は「できない」または「難しい」です。そのことについて、法人設立を例に見ていきましょう。

例)「創業」または「既存の企業が新規事業の立ち上げ」のより法人設立をし、個人が1,000万円を出資する場合

そもそも出資と資本金はイコールでありません。そのため、出資額の全額を資本金にしないことが可能です。それを踏まえて、2つのケースで比較検討しましょう。

 

(1)出資額の全額1,000万円を資本金とする場合
法人の登記簿謄本に資本金1,000万円と記載されます。得意先など取引先に対する信用度を示す指標となり、出資額の全額を資本金にするのが一般的です。しかし、設立時の資本金が1,000万円以上の場合、初年度、2期目は消費税の課税事業者となります。仮に初年度の途中で資本金1,000万円未満を減少させても(減資)、免税事業者になれず、消費税は免除されません。

 

(2)出資額の半額500万円を資本金とする場合
会社法では、出資額の2分の1以下を資本金とせず、資本準備金にすることが可能です。そのため、出資額1,000万円の2分の1にあたる500万円のみを資本金とし、残り500万円を資本準備金にすることができます。それによって資本金は1,000万円未満となるため、初年度、2期目は原則、免税事業者となります。

 

このように2つのケースでは資本金等の額は同額でも、設立時の資本金の違いによって消費税が課税または免除かどうかが決まってきます。

しかもこの場合、課税事業者から免税事業者に軌道修正できません。

「やっぱりやめた!」っていう後出しじゃんけんは特に税務の世界では認められません。

知っておきたい税法上の4種類の資本とは?

4種類の資本は金額が小さいほど節税に有利です。そのため、法人の経営者や経理担当者なら、資本金と資本金等の額を混同することなく、税金の計算に影響する4種類の資本をきちんと知っておく必要があります。

資本金

法人の登記簿謄本に記載される金額であり、会社法では最低限維持しなければならない自己資金(会社のお金)と位置づけられています。そのため、たとえば資本金を1,000万円から800万円に減資するためには、登記が複雑です。具体的には、「官報に資本金の額の減少公告が掲載」や「債権者への通知」など一カ月以上の期間がかかります。つまり、資本金の計上額を事後的に変更するのは難しいのです。

資本金等の額

そもそも法人の自己資金は「株主を通じて直接お金を出入りする金額」と「創業以来の累積利益」に大別できます。そのうち、前者が法人税法上の資本金等の額となり、具体的には下記(1)から(2)を差し引いた金額です。

(1)株主からの直接入金する金額

おもに次の出資額の合計です。
 資本金
 資本準備金 など

(2)株主に対する出資金の返金額

おもに次の合計額です。
 資本金の減資
 資本準備金の減少
資本金の減資と違い、資本準備金の減少は複雑な登記は必要なく、小回りが利くのが特徴です。
 自己株式の取得

ちなみに自己株式の取得を簡単に説明すると、法人が株主から買い取った自社株のことを指します。

たとえば、資本金1,000万円の法人を2人で500万円ずつ共同出資したとします。そのうちの一人が法人の経営から退くために出資した500万円の返金を求めてそれに応じる場合、「減資」または「もう一人が株式を買い取る」代わりに、法人が買い取ることができます。

なお、買取金額の設定によって自社株を売却した本人に対して「みなし配当」などにより、所得税の課税があり得ますので、この点は特に注意が必要です。

(3)お金の動きの伴わない無償増資と無償減資は資本金等の額を増減させない

「創業以来の累積利益を資本金に組み入れる無償増資」や「創業以来の累積赤字を補てんするための資本金を取り崩す無償減資」といったお金の動きの伴わないものについては、たとえ決算書の資本金が減少しても、資本金等の額を増減させません。

資本金等の額の特例(事業税と住民税に用いる金額)

同じ資本金等の額でも法人税法と違い、事業税と住民税に用いる金額は次の算式で計算します。

 資本金等の額の特例に基づく金額=資本金等の額+2010年4月1日以降の無償増資-2001年4月1日以降の無償減資(※3)

(※3)2006年5月1日以降については「資本金または資本準備金」を「その他資本剰余金」に振替後、1年以内に無償減資を実施しないと、資本金等の額からマイナスをすることができません。

▼資本金+資本準備金
事業税と住民税の計算で用いる金額です。

資本金と資本金等の額がどのように税金の計算に影響を与えるのか?

資本金と資本金等の額が税金の計算に影響を与える項目について、主な内容を見ていきましょう。

資本金

中小企業の場合は1,000万円、3,000万円、1億円が税金の計算に影響を与える目安となります。

(1)1,000万円の壁
 原則、初年度と2期目は消費税の免税事業者になれる など

(2)3,000万円の壁
 中小企業投資促進税制の特別控除(直接、法人税から控除する制度)が受けられる(※4) など

(3)1億円の壁
 所得金額のうち年800万円までは法人税の軽減税率15%が受けられる
 30万円未満の固定資産が一括で経費に計上できる(※4)
 前年度以前の青色申告に基づく欠損金(赤字)の全額が所得金額から控除できる
 中小企業投資促進税制の特別控除(経費の追加計上)ができる(※4)
 交際費等のうち800万円まで全額経費に計上できる
 法人事業税の外形標準課税(赤字でも課税される制度)の対象から外れる

など
上記(※4)は青色申告で確定申告をした場合に限る項目です。

法人税法上の資本金等の額

 寄付金の一部の経費に計上する限度額の計算に用いられる

「資本金等の額の特例に基づく金額」と「資本金+資本準備金」のうち、大きい金額

 法人住民税の均等割(赤字でも課税される税金)に参考数値に用いられる
具体的には、次の5段階の金額に比例して均等割が高くなってきます。
・1,000万円以下
・1億円以下
・10億円以下
・50億円以下
・50億円超
 外形標準課税の資本割(税率0.525%)に用いられる

まとめ

資本金と資本金等の額によって税金の計算が違ってきます。特に資本金は税金の計算に影響し、減資をする登記は複雑なため、出資する際に両者を混同すると事後的に変更するのは大変です。

また、法人設立時を資本金1,000万円にした場合、減資しても消費税の課税事業者から免税事業者にすることはできません。そのため、資本金と資本金等の額についての正確な知識を身につけましょう。

投稿者プロフィール

佐藤淳一公認会計士・税理士
1987年1月6日 / 千葉県
東京都中央区で会計事務所を現在経営しています。
スタートアップ企業の会計税務顧問のほか、財務デューデリジェンス、株価算定、組織再編、移転価格といったビジネスコンサルティングに従事しています。クロスボーダー三角合併や事業の多角化に伴う純粋持ち株会社化など組織再編を絡めたOnly Oneな提案を得意とします。

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